寝室の扉を開けようとドアノブに手を伸ばしたジストは、ふと、隣の部屋の扉の隙間から明かりが漏れているのに気が付いた。
そこはメノウの部屋だ。
てっきりすでに眠り込んでいると思っていたが、様子を窺おうと彼女はその扉をノックする。

「入るぞ、メノウ」

そっと扉を開けると、窓際で外を眺めている彼がいた。
テーブルの上には銃と弾丸が散らかっている。
手入れをしようとして、途中でやめたようだ。

「一体どうしたのだ?
元気がないではないか。
まぁ、君が元気で満ち溢れている様は想像できないが」

ケラケラと一言余計な言葉を浴びせるが、彼はこちらを向こうともしない。

「おい、聞いているのか! 君!」

コツコツとテーブルの端を叩いてみると、ようやく彼は振り返る。
いつも通りの無表情だが、どこか眼差しが曇って見える。

「なんや、こんな遅くに。
明日早いんやろ。
さっさと寝や」

「君のせいでこんな時間なのだ!!」

「別に、起きて待ってろなんて頼んでへんわ」

はぁ、と彼はため息を吐く。

「様子がおかしいと踏んで来てみればこれだ。
そんなに金欠なのか?」

「金欠・・・?」

彼の頭上に疑問符が浮かんだ気がした。
ということは、そういう話ではないらしい。

「何を思い悩んでいるのか、仲間として聞いておきたいと思ってな。
どうだ、私に話してみないか?
なんなら、酒の力を借りてもいいぞ」

「あぁ、おおきに。
けど、別に何もないわ。気にせんといて」

彼はテーブルに投げ出されていた小さな箱から1本煙草を取り出し、一服する。

「遠慮のない男だな!!
娘の前では吸わない癖に、私は煙で死んでもいいというのかっ!!」

咳込みつつ煙を手で払う彼女に、彼は遠い目を向ける。

「せやなぁ・・・。
まぁ、そういう事やな」

「ええい、もういい!!
私は部屋に戻る!!
せいぜい良い夢を見る事だな!!」

ばたばたと部屋を出たところで、彼女は振り返ってにんまりと笑う。

「おやすみ、友よ」

ひゅっ、と引っ込み、隣の部屋の扉が閉じる音がした。





「答えはもう、決まってるのに、なんでやろなぁ・・・」

ぼそっ、と彼は呟き、煙草を力任せに灰皿へ押し付けた。


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