今日も澄んだ空が広がっている――
水桶を抱えて湖にやってきたハイネは、これから暑くなるであろう陽気を感じて汗をぬぐう。
いつも通り水を汲んでいると、水面に人影が写った。
ハイネには見覚えがある。
この前父親が戻ってきていた時、胡散臭い笑顔で自らをヒーローと名乗ったあの男だ。
「あれ、おにいさんまた来たん?」
特に何の警戒もなく、人懐こく声をかける。
しかし、その言葉の返事はなかった。
目の前が、突然真っ暗になる・・・――
ハイネは、自らが宙に浮いた感覚を覚えた。
「ハイネちゃん! ハイネちゃん!!」
オアシスに響く、人々の必死な呼び声。
返して、返して、と泣き叫ぶ老婆の声。
普段は滅多に外へ出てこない長老さえ、車椅子で飛び出してその名を呼ぶ。
その子は、いなくなってしまった。
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