奇妙な夢を見た。

ジストは両親に囲まれている。
しかしその父親はアメシス王ではないし、母親と思しき女性も、肖像画で見た王妃とはどこか違う。
でも夢の中のジストはその2人を親として認識し、甘え、育まれている。

久しぶりにレムリアの姿も現れた。
あの柔和な微笑み、優しい眼差し、落ち着いた物腰と優雅な振る舞い、彼の残り香。
懐かしく、そして切ない寂しさを思い起こさせる。

レムリア。早く君に会いたい。君の無事を確認したい。

それでも。

何かが、何かが引っ掛かるんだ・・・――





「姫様、朝ですよ!!」

カイヤの声に叩き起こされる。
寝ぼけ眼のまま、ふにゃりと笑っておはようと返す。

「もー、これが本当に一国の王子様の顔なんですかね。
向こうの王子も寝坊で全然起きてこないし!!」

「おはよう、ジスト」

覚えたての言葉を使うように、カルセが声をかけてきた。

「おお、カルセ!おはよう!!
体調は大丈夫か?!」

「うん、平気。
でも変な夢を見た」

夢見が悪いのか、彼は困ったように眉尻を下げる。

「怖い夢だったな。
優しそうな男の人が、ずっと笑ってるんだ。笑ってるのに、怖い。
でも、お父さんとお母さんみたいな人が出てきた」

むくりと起き上がったジストは首を傾げた。

「はて。まるで私の夢と相反するようだな?」

「カルセドニーさん、そのお父さんとお母さんって人の顔は覚えてるんですか?」

カイヤが尋ねるが、彼は首を横に振る。

「ぼんやりしてて・・・よく、わからなかった。
笑っていた男の人も、そう・・・」

そうですか、とカイヤはいくらか残念そうにぼやくと、立ち上がった。

「まぁ、一日二日で思い出せるようなものじゃなさそうですし、仕方ないですね。
姫様、支度整えて出発の準備してください。
寝癖で髪の毛ぐちゃぐちゃですよ!」

「そうだな。すぐに済ませよう」

重力に逆らう髪に触れてベッドを出たところで、ジストは自分の髪の毛先の色が白くなっている事に気が付いた。

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