ベッドに座ってぼんやりするカルセの前にガタガタと椅子を引っ張ってきたジストは、そこに座って彼の目を覗き込む。

「気分はどうだ?
どこか痛かったり、苦しかったりしないか?」

「大丈夫・・・」

こくん、と頷きながら彼は答えた。
なんというか、中身だけ子供のような青年だ。見た目不相応にどこか幼い仕草が目立つ。
ジストにとっては愛らしいらしく、彼が反応する度に興奮して自らの膝を叩いている。

「ジストって幸せそうだよね。どうしたらあんな風に生きられるんだろ」

サフィが淹れた茶を片手にアンバーは苦笑いだ。
ソファに座って剣を磨いているコーネルはフン、と鼻を鳴らす。

「阿呆なだけだ。昔からあいつはあの調子だ」



カルセはぼんやりと自らの人差し指を見つめている。奪われたという指輪の事でも考えているのだろう。
ジストも、手袋の上から自分の指輪をぎゅっと握りしめた。

「君は一体どこの生まれなのだろうな。
皆が私と君がよく似ていると騒ぐのだ。ひょっとしたらアクイラ王家の血縁だったりするのかもしれない」

「アクイラ・・・おうけ?」

「そうだ。私は緑の国の王族の生まれでな。覚えているか、あるいは知っているかわからないが、少し前に亡国となってしまった。
私の唯一の家族であった父上も亡くなって、王城の者達も、その多くは・・・」

「ジストは・・・おうさま?」

「その予定だったが、今は何の変哲もないただの“旅人”だ!」

はっはっは、と笑い飛ばす彼女。

「なんだろうな。私は君に誰かの面影を見ている気がする。懐かしいんだ」

「・・・そう」

カルセはゆっくりとした仕草でジストの方を向く。

「僕も・・・そんな風に思う、かも」

「そうかそうか!
安心したまえ、君との出会いは何かの縁。君が誰かわかるまで、私がついているぞ!」

ぽんぽん、と彼の背を叩く。
表情がほとんど見てとれない彼だが、わずかに安堵を覗かせたように見えた。

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