(この人、おっきくて怖くてニガテなんだよなぁ・・・)

カイヤは恐る恐る、前を行くメノウをチラチラと窺う。

「なんや、何か言いたい事でもあるん?」

こちらを見ずとも、彼は声をかけてきた。
ビクッ、と跳ねたカイヤは、いえ別に、とだけ返す。



「クレイズが心配か」

再び驚いて飛び跳ねる。
悔しいが図星だ。不服そうに、だが素直に頷く。

「・・・だって、当たり前じゃないですか。
目の前で、ずっと信じていた人に銃を向けられて、ボクだけ逃がされて。
ボクを庇って、博士は怪我をしたはずなんです。アンリ先生だって。
ボクは孤児だから、帰る場所は博士のところにしかないんです。
なんで博士があんな事になったのか、どうしてローディ先生はボク達を裏切ったのか。
・・・全然、わかんないです」

メノウは静かに聞いていた。
カイヤはずっと胸に秘めていた言葉が歯止めを失くしているのを感じた。

「ローディ先生、博士を欲しがってた。ローディ先生とアンリ先生は姉弟のはずなのに、殴ったり、撃とうとしたり・・・。
博士が目当てみたいだったから、あれ以上の危害はない、と、思いたい、のに・・・、ボク・・・」

思わず立ち止まる。

「な、なんで、・・・ボク、なんで、メノウさんにこんな話・・・。
関係ないのに、・・・っ!」

「当然やて。親が殺されるかもしれんってのに」

「メノウさん・・・?」

「気休めは言わん。言うほど、ワイは器用やない。
せやけど、・・・姫さんについて行きゃ、またクレイズに会える。安心しとき」

「どうしてそう言えるんですか?」

「そういう奴なんよ。姫さんはな。
お前らのためにゃ身も捨てられる。グレンも、そう思ってお前をこっちに寄越したんやろ」

煙草に火がともる。

「そのローディとかいう奴。カイヤの馴染みか?」

「え、えぇ・・・まぁ・・・。
お母さんみたいな、お姉さんみたいな、そんな人です。
博士もローディ先生とは結構親しかった・・・ような」

「アンリとかいう奴は?」

「アンリ先生はローディ先生の弟さんです。ボクが学校にいる間、担任の先生でした。
最も、それ以前に、昔から博士の助手をしている人なので、ボクも小さい頃からよく知っているお兄さんです」

「・・・クライン、って名前。知っとるか?」

不意にその名が出され、カイヤはきょとんとした。

「そういえば、小さい時に博士から聞いたような。
クラインって人には近づいちゃだめだって。
なんか・・・危険人物なんですかね?」

「・・・ふうん」

会話はそこで終わった。
店で食材を買い、以降2人はほとんど喋らないまま宿へと戻る。

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