ホグニの宿屋に入ると、その小奇麗な内装に圧倒される。
王城ほどのものではないが、高級そうなソファやガラス製の置物が並んでいる。
部屋に入ると、機械仕掛けのキッチンや大きなベッドが出迎えた。
他の国では考えられないが、部屋1つ1つに時計まで設置されているようだ。

「な、なんだこれは・・・!
この突起を押すと火が出る!この取っ手を動かせば水が出る!
魔法のようだな・・・。いや、違うな。魔法などいらない世界だ」

物珍しそうにジストはあらゆる部品に触れている。
渋い顔で眺めていたコーネルも無意識のうちに近くの棚を開けていた。
開けた瞬間に冷気が漂い、彼は肩をはねてからそっと閉じる。

「メノウさんがダインスレフに住んでた頃も、やっぱこんな感じだったの?
至る所が機械仕掛け」

「もう何年も前やし、ここまでではなかったな。
ましてや、大衆向けの施設でこんな」

調理器具もしっかりと並んでいる。
にわかに期待する顔で、ジストはメノウに駆け寄った。

「久々に君の料理が食べたいぞ」

「言うと思った」

ベッドにカルセを横たえさせると、さて、とメノウは肩を回す。

「買い物行く。荷物持ちついてきー」

「よし!行って来い、カイヤ!」

「なんでボクが?!」

「たまには良いではないか!
黒の国に来ることが目的だったのだろう?
少し街中を見てくるといい!!」

「え、えー・・・?!
姫様も一緒に・・・」

「私は少しカルセと話がしたい!」

渋々、カイヤはメノウについて部屋を後にした。

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