あぁ、よかった。
誰もが安堵の息を漏らす。

「まったく、心配させてくれるな!」

ばしばしとメノウの肩を叩くジストも、すっかりいつも通りの軽やかな表情だ。

「ふん。傭兵の事を言えた分際か。小鹿のように震えていたくせに」

「なっ!!コーネル、君は少し紳士になったらどうだ?!
私が女性であると知ったのだろう?」

「戯け。たかが性別でコロコロと態度を変える程暇ではない」

一悶着済んで緊張の糸が緩んだのか、誰しも口が饒舌にまわる。
しかし、メノウはぼんやりと虚空を見つめたままだ。

「まだ、ご気分がすぐれませんか・・・?」

サフィが顔色を窺ってくる。

「あぁ、まぁ、多少なりは、な」

彼はそう言うが、サフィはすぐに見破る。

「・・・聞いてしまいました。アガーテさんの事」

はっ、と彼は目線を向ける。
この微妙な空気のところにアンバーがやってきて、サフィの隣に座る。

「大体聞いちゃったよ。メノウさんがブランディアの王城で兵士やってた事も、奥さんがアガーテさんだって事も。
そういえば、ゼノイって人がメノウさんに感謝してたよ。恩返ししたいんだって、俺達に協力してくれた」

「そうか」

「ああ、もう1つ。
実はね、王子がヴィオル王をぶっ倒しちゃったんだって」

相変わらず向こうでソファに寝そべる彼に目をやる。

「すごいよね。ジストが危ない目に合ってるところを見て、仮にも一国の王様を殴り飛ばしたとかさ。
向こう見ずっていうか」

クスクスとアンバーが笑う。

「皆さん、メノウさんとジストさんを助けるために1つになった気がします。
私達、仲間です。メノウさんも、何かあったら相談してくださいね。必ずお力になりますから。
私も、アンバーさんも、そうやってお2人に救われたんです」


それは、救いの言葉だろうか。
それとも。

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