「ねぇ、クライン。私、やったのよ。
貴方のためなら弟だって殺せる」
「誰が事を荒立てろと言いましたか」
「仕方ないじゃない。それよりもっと褒めて。愛して。
私は貴方のために可愛い弟を犠牲にしたのよ?」
「歪んでいる。皆同じですね。詰まらないものだ。
まぁ、あのクレイズを生け捕りにした実績は称えましょう」
棚から薬瓶を取り出したクラインは、注射器の中に瓶の液体を注入する。
「本当に大丈夫なの?
一般人ならもう発狂して死ぬくらいの量でしょう?」
「そうですね。“一般人なら”、ですが」
ローディは椅子に腰かけて艶めかしい脚を組ませる。
「ダーリンはいい趣味ね。
自分の生き写しを実験体にしちゃうんだから」
「実弟を手にかけた貴女に言われたくはないですね」
注射針から数滴、液体が漏れる。
「そう。もう発狂してしまってもおかしくはない。
だがそうならないどころか、未だに自我を保っている。
やはりあの男は・・・」
無表情だったクラインの口元が歪む。
「それでいい。延々と悶え苦しみ、死をも許さない。実に愉快だ」
注射器を携えた彼はゆっくりと部屋を後にした。
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