ぺた。
ぺたぺた。
ぺたぺたぺた。

小さな足音。冷たい床を踏み鳴らす。
幼い少女は古びた鉄格子の前で立ち止まる。

「ここは遊び場じゃないよ」

牢に囚われる者が、少女に呼びかける。

「あぁ、やっぱり変わらないね。14年間、ずっと。
ずっと君は、子供のままだ」

「おにーさん、フェナのことしってるの?」

少女がつたない言葉でそう返すと、暗がりの中の彼は憂いを帯びた顔で口元を緩めた。

「そうだね、知っているかもしれないし、知らないかもしれない。
どうしても、どこへ行っても、君のお父さんは“歪んでいる”んだね」

ごほごほ、と彼は咳込む。
何かに侵されているような様子だ。

「パパ?
フェナのパパをしってるの?
パパはどこ?」

小さな手で鉄格子を掴んでしがみつく少女。
まるで人形のように表情がない彼女だが、いくらか語気に執着が滲んでいる。

「君のお父さんは・・・――
遠いところにいるよ。君の呪いが解けない限り、君は永遠にたどり着けない場所」

ごほごほ、とまた咳込み、そして崩れるように倒れる鈍い音がした。

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