ゼノイが牢番を拳の一撃で沈ませると、鍵を奪う。
重い格子扉を開けた先は、淀んだ空気が立ちこめる地下牢だった。
拷問に使われるような禍々しい鉄器具が散乱し、長い年月拭い取られなかった血痕が壁に黒く染みついている。

「サフィ、ごめんね。俺と一緒に来させちゃって。
もしメノウさんが大怪我してたらって思ったら、サフィに頼らざるを得なくて」

「だ、大丈夫です。
きっと・・・お役に立ちます」

こつ、こつ、と歩き回りながら、牢を1つずつ覗く。
蠢く奴隷達の恨めしい視線を浴びながらも、3人は目的の人物を必死で探す。



どこかからか、荒い息遣いが聞こえてきた。
目を合わせた3人は、急いでその方向へ走る。



「メノウさん!!」

横たわる彼がいる。
息苦しそうに倒れたまま、動かない。

「隊長・・・!どうしてこんな」

「サフィ、頼める?!」

「は、はい!今すぐ!」

駆け寄ったサフィは治癒をしようと手をかざして、蒼白になる。
打たれたり、切られたりした傷が酷いのもそうだが、横たわる彼が虚ろな目のまま反応を示さない。

「ど、どうしちゃったんだろ・・・?!
なに、病気?!」

「ち、違います、これ・・・」

サフィは闘技大会の前を思い出す。
メノウと2人で見たブランディアの裏。路地に倒れていた人々と同じ瞳だ。

「薬・・・かもしれないです。
私、見たんです。この街の裏で、薬のせいで倒れている人達を!」

「薬物か。ブランディアの裏で流通している、毒草の薬だ。
あれは人を廃人にする。一時の快楽と引き換えに」

「そ、それを無理やりやられたって事?!
ねぇサフィ、それって治せるの?!」

「わ、私の治癒魔法は外傷を癒すものだから・・・私だけでは・・・」

はっとする。

「そ、そうです!
カイヤさんなら何か知っているかもしれません!」

「そうか!カイヤん、確かあの博士さんの弟子なんだよね? 薬には詳しいはずだ!
とにかく傷だけ治して、ここから連れ出そう!後は全員で合流してからだ!」

彼を拘束していた鎖を全て取り外し、アンバーとゼノイが彼を引っ張り起こす。

「メノウさん、頼むから死なないでよね・・・!」

急いで地下牢を出る。

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