今日も今日とて、退屈そうに城門に立ち尽くす青年は、珍しくこちらへやってくる人々の姿を見た。
一応、通例として持っていた剣で城門を塞ぐ。

「何の用事か」

「あー、えーっと、実はお尋ねしたい事が・・・」

ヘコヘコと頭を下げるアンバーを押しのけ、コーネルが険しい顔を覗かせた。

「おい。昨夜、奴隷が2人捕まったはずだ」

「それが何だ」

「我々の身内だ。返してもらおうか」

「それは無理な相談だ」

門を塞いでいた剣先が付きつけられる。

「一度奴隷となった者は救われない。救うなら、城が1つ建つほどの金が必要だ」

「いいだろう。俺が払う」

「お、王子様!
そんな大金、即決なさっては・・・!」

サフィに小声で窘められると、コーネルは剣を抜いた。

「ではこの門番を斬り倒す。
阻む者は全て斬り捨てる」

今度はカイヤが声を上げる。

「正気ですか王子っ?!
そんな事したら姫様とメノウさんが危険な目に・・・!!」

「メノウ?
今、メノウと言ったか?」

門番が付きつけていた剣を下ろす。
意外な人物の名前に反応を示した彼を説得しようと、アンバーはコーネルを退かせる。

「君、メノウさんを知ってる?
じゃあ話が早いよ。俺達、あの人達と今旅をしてる仲間なんだ。
もし本当に2人が奴隷として捕まっているのなら、タダでとは言わないから、2人が囚われている場所を教えてほしいんだ」

門番は無表情で凝視してくる。

「俺は、昨夜捕まった奴隷がどんな奴らかは知らない。顔も見ていない、名前も知らない。
だが本当にメノウという人物が囚われているのなら、俺はあの人を助けに行く義理がある」

持っていた剣を鞘に納め、門番は腕を組んだ。

「少し、時間が欲しい。話をつけてくる。
お前達は俺が呼ぶまでおとなしくしていろ」

彼はつかつかと城内へ向かって行った。

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