案の定、朝になっても2人は戻らなかった。
いくらなんでもただ事ではない。

「おい、小娘。お前、少しは学に明るいらしいな。
ブランディアの人攫いの話をもっと聞かせろ」

「それが人に物を頼む態度ですかね」

不機嫌そうにむすっとした顔のカイヤは仕方なさそうに話す。

「この国の奴隷を集めているのは、どうやらブランディアの王族エレミア王家らしいです。
ほら、闘技大会の時にいたでしょう? あのいけ好かない感じの男性。
集めた奴隷は、女性なら国王の愛人、男性なら強制労働者や例の闘技大会の闘士にさせられるそうです」

「ど、どうすんの?!
メノウさんはまだしも、ジストは・・・」

「奴は亡国の娘という事になる。あのヴィオル王が放っておくはずがない」

コーネルはゆらりと立ち上がって空を睨む。

「この宝剣の錆にするには汚らわしすぎる事この上ないが致し方ない。
・・・ジストを早急に取り戻して、いろいろと事実を吐かせなければならない・・・」

静かに闘志を燃やす彼の背を見て、一行はお互い顔を見合わせる。

「あの人、本当に姫様が姫様だって知らなかったんですか?」

「うん。出会ってから何年も・・・昨夜まで、知らなかったらしいよ・・・」

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