「遅い。遅すぎる」

ジストの帰りを待っていたが、痺れを切らせたコーネルがぼやく。

「変なの。探しに行ったメノウさんまで戻ってこないなんて。
ジスト、迷子にでもなったのかな?」

「仲睦まじく寄り道でもしてるんじゃないですか。男女ってそういうものなんでしょう?」

面倒そうにカイヤが本を読みながら言った言葉。
聞き流しかけていたコーネルがソファから起き上がる。

「お前は何を言っているんだ?
ジストは男・・・」

「えっ、王子こそ何言ってるんですか?
もしかして王子って姫様に騙されっぱなしなんですか?」

一瞬の沈黙。アンバーが悲鳴を上げた。

「カイヤ―――ん!!なんでそれ言っちゃうの!!!」

「えっ? だって隠す必要なんて・・・」

「男にはプライドがあるんだよ―――!!!」

「はぁ?
たかが性別になんのプライドが・・・」

カイヤがソファを見ると、崩れ落ちて身動きをしないコーネルがいた。



「で、でもやっぱり、おかしいですよね。遅すぎますもの、お2人とも」

話を逸らそうとサフィが声を上げる。

「どうする? 探しに行く?
でもこれでまたその人が戻ってこなくなったら意味ないよね・・・」

「そういえば、小耳に挟みました」

カイヤが本を閉じる。

「夜のブランディアは危険だって。
奴隷を集めようと、怪しい連中が動くらしいです」

「ま、まさかメノウさんとジスト、2人ともそれに捕まったんじゃ・・・」

あわわ、と青ざめる。

「あの傭兵がいるんだ・・・。動くのは朝になってからでいいだろう・・・。
俺はもう・・・今日を生きる気力がない・・・」

コーネルはそのまま毛布を被ってしまった。

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