「ヴィオル様!」

戦闘を見下ろしていた国王に、兵達が駆けつける。

「あれは例の男です!
ここで捕えずして・・・!!」

「まぁ待て。
私は余興をじっくりと楽しむ気質でな・・・」

ヴィオルは歪んだ笑みを覗かせる。

「“あの男”の近くに、アクイラ王家の娘がいるはずだ。
そいつを捕えろ。なんでも男装をしているらしいが・・・
寵姫として迎えるのも悪くはない。
男として振る舞う姫君に女としての喜びを味わわせたい」

「は、・・・はっ!ただちに!!」

兵達は慌ただしく駆けていく。
傍に控えていた参謀らしき老齢の男は堪えきれずに噴き出す。

「またもやヴィオル殿下の収集癖ですかな」

「あぁそうだ。私が目をつけたものは全て宝。
故に、私の宝を盗んでいったあの奴隷上がりに屈辱を返してやりたい」

「寵姫など、もう何十人といらっしゃるではないですか」

「あれは全て玩具だ。奴隷と変わりない。
私が言う寵姫は武器だ」

「おぉ、恐ろしい恐ろしい・・・」

波乱の幕開けとなった闘技大会は、夜まで続く――。

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