倒れたのはアクロだった。
大歓声が上がり、会場では賭博の紙が吹雪のように舞った。

「どうした。殺さないのか」

アクロは倒れたまま立ち尽くすメノウに問いかける。

「別に。ワイはそもそも闘士ちゃうし、勝敗なんざないわ」

「甘いな、相変わらず」

アクロは脇腹に負った傷を抱えてゆっくりと起き上がる。
背を向けたメノウに、アクロは静かに声を投げかけた。

「・・・傭兵。本当はお前を信じたい」

聞き間違えたかと思うほど、その口調はまさにコーネルだ。
思わず振り返る。

「お前はこの先、ある二択を迫られた時に苦悩するだろう」

「二択?」

「お前がある一方を選んだ時。俺は再びお前を殺しに現れる。
今度こそ、殺す。
・・・覚悟しておけ」

ゆらりと立ち上がり、アクロは去って行った。

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