「煩い虫がいたものだ」
「悪いなぁ。
なんや知らんけど」
ただ静かに、メノウは剣を構える。
「こっちもここでくたばる暇ないんでのう・・・
手短に頼むで」
「言ってくれるっ!!」
とにかく進行しようと審判は開始の合図を鳴らす。
同時に2人は走り出た。
剣撃が重い。
大剣に物怖じせず斬りかかってくるアクロの殺意にまみれた瞳。
その顔立ちから連想されるコーネルとはまるで違う、何か深淵のような過去を秘めていそうな目だ。
もしもコーネルが道を踏み外したのなら、こんな姿になるのかもしれない。
「考え事をしている暇はあるのか?!」
シュン、と風切り音。
首元を掠めた刃が、そのまま赤い髪を貫く。
解けて流れた髪の陰から、一筋赤い雫が流れた。
だが怯む間もなく、今度はメノウがアクロの肩を削ぐように大剣を振り下ろす。
腕に焼けるような痛みが走った。
「俺はお前やコーネルへの憎しみを糧に生きてきた」
負った傷を手で押さえるアクロはギラギラと憎悪に燃える視線を投げてくる。
「そうだ。“今ここにいる”貴様らに何の情もない。
ただ俺は、貴様らという“存在”そのものに恨みがある。
俺は何度も何度も、貴様らを手にかけてきた。そう、何度も、だ。
全ては、ここにいるジストを守る為に」
呪詛のように吐く言葉の羅列。
彼の話が一体どういう意味なのかはわからない。
わからないが、何か違和感がある事に気が付く。
「さぁ、終わりにするぞ。
この一撃で決して見せろ」
一歩間合いを取り、沈黙。
そして2人は同時に斬りかかった。
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