「指名どうも。何の用やねん」
大剣を手にするメノウに、アクロは剣を突きつける。
「俺はお前を殺しに来た。この場で、この観衆の面前で、ジストの前で・・・
貴様を八つ裂きにする」
「どんな恨みを買ったんや。記憶にのうてな」
「そうだな。覚えているはずもない。
・・・否、“知るはずがない”」
奇妙な新顔の闘士と、この大会をかねてから見守る層にはなじみのある顔が向き合う。
審判は困惑したままだが、観客席の方ではすでにどちらが勝つかの賭けに切り替えている。
「どういう事だ・・・?!
どうして、メノウが」
「・・・あの人、この大会に出た事があるそうです」
サフィが小声でジストに囁く。
「この大会、ブランディアの奴隷同士を戦わせる大会だそうです。
つまり、メノウさんは・・・」
「奴隷、だった・・・という事か・・・」
しかし今はその事よりも、目の前で繰り広げられる寸前の戦いを何としても止めなければいけなかった。
「ど、どうするんですか?
どちらもお知り合いなんでしょう?死んじゃいますよ、これ!」
カイヤがジストの裾を引っ張って悲痛にそう叫ぶ。
蒼白なジストの隣で、コーネルが舌打ちした。
「おい傭兵!!そんな男、返り討ちにしろ!!
こんなところで死に顔を晒したら、俺は未来永劫貴様を罵り続けてやる!!!」
「お、王子、ちょっと落ち着いて・・・」
「ジスト!!お前もお前だ!!
お前はどっちを味方するつもりだ?!
動揺している暇があったら声の1つでもかけろ馬鹿野郎!!」
「わ、わかっている!!わかってはいるが・・・!!」
アクロを蔑にする勇気が出ない。
それが何故か、ジストにはわからない。
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