奴隷闘士とは思えぬ整った身なりの闘士に、会場はざわめく。
先程の戦いに勝った闘士は、生々しく赤黒い液体を滴らせる剣を手に笑う。
「な、なんだよお前・・・。お、俺に勝とうってのか・・・。へ、へへ・・・。
俺は、負けない、俺は、生き残って、こんな人生、変えてやるん・・・」
ザシュッ!、と鋭い音。
言い終わらない内に、アクロはその闘士を斬り捨てていた。
あえなく倒れた闘士を見て慌てた審判がアクロに駆け寄る。
「お、おい!まだ戦闘は始まってないぞ!」
「こんな奴の相手をしている暇はない」
風を切るように刃を払って血を飛ばしたアクロは、ある一方に切っ先を向けた。
「メノウ・ロート・アードリガー!!
俺は貴様との一騎打ちを望む!!
いるのはわかっている!!さぁ、降りてこい!!!」
会場中に轟くアクロの叫び。
彼が呼んだ名前に、観客は興奮状態に陥る。
「アードリガーって・・・まさかあの男か?!」
「帰ってきたのか?!」
「またあいつの戦いが見られるのか!!なんてこった!!」
ジストは真っ青になって周囲を見回す。
聞き間違えるはずがない、確かにアクロはメノウを呼んだ。
彼の本名は知らなかったが、その名は彼以外思い当たらない。
「サフィ、メノウさんは?!」
「えっ?!
さ、さっきまでご一緒だったのですが・・・」
コツ、コツ、とどこからともなく足音がする。
コーネルは身を乗り出した。
「傭兵?!いつの間に!!」
建物の陰から現れたのは、正真正銘、あのメノウだった。
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