「ブランディア、ですか?」

この後の行き先を聞いたカイヤは首を傾げる。

「そうだ。王都ブランディアの先がいよいよダインスレフ領という事なのだよ」

メノウからの受け売りを得意げに語るジスト。
そこにアンバーが顔を出す。

「そういえば、そろそろ闘技大会の時期だった気がする。
すっごい大きなイベントでさ、俺は見た事ないけど、手伝いに行った傭兵仲間に聞いた事あるんだ」

「それならば俺も小耳に挟んだ事がある。
ブランディアのエレミア王家は、その闘技大会で優勝した者を城の兵として迎えるらしい。
そのおかげで、王城兵は実力主義を銘打った粒揃いだそうだ」

「コーネルがそこまで知っている他国事情など珍しいな?」

「俺もそれと同じ事を提案したらリシアに平手を食らった記憶があるからな」

苦々しい顔が覗く。
こんな話を聞いてしまえば、興味が湧かない方が無理というものだ。





「おとん、次いつ帰ってくる?」

「わからん。今度は長くなるかもしれん」

泣きそうに顔が歪む娘に、メノウはため息だ。

「ゼッタイ、約束。
次帰ってきたら、うちとどっか遊びに行くって!」

小さな小指が差し出される。
そんなハイネに視線を合わせるようにしゃがんだメノウは、その小指に自分の小指を絡めた。

「あぁ。せやから、屋敷でおとなしく待っとるんやぞ」

「うん、わかった。
いってらっしゃい、おとん!」

小さな手を精一杯振って見送るハイネに手を振り返した一行は、オアシスから再び砂漠の道へと踏み出す。

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