コンコン、とノックの音が響いたのは日暮れ時だ。
はーい、と返事をしてハイネが玄関へ走る。
扉を開けると、華奢な人物が立っていた。
「アードリガーさんのお宅ですか?」
「へ?
うん、そだよ」
「メノウさん・・・って、いらっしゃいます?」
「おとんの知り合い?
おとんー、なんかお客さんー」
奥に引っ込んだハイネの代わりに現れたのは、強面の男だった。
「げ、やっぱり!!」
「あ?
お前は確か・・・魔法学校の」
「・・・はい。
お久しぶりです。カイヤです」
メノウは少し玄関から外を見て、カイヤに視線を戻す。
「なんや、1人か?」
「いえ。ここまではグレンさんと・・・お連れの方と一緒に。
グレンさんに“アードリガーの家を探せ”って言われて、村の人に聞いてまわったらここだと」
「・・・なんか知らんが、用か?」
「ボクにもよくわかんないですよ。グレンさんに勝手に連れてこられたんです。
ボクは黒の国に行きたいって言ったのに」
「黒の国・・・」
玄関で話し込むのを不思議に思ったのか、後ろからジストがやってきた。
「おや?!
君はカイヤではないか!!どうしてここに?」
「なぁ、黒の国行きたいんやて、こいつ」
「なんと!」
ジストはパッと笑みを浮かべ、カイヤの手を取った。
「そうか!つまり同じ目的地の私達を追いかけてきてくれたのだな?!
いいだろう!!さぁ、今から君は私達の仲間だ!!共に・・・」
「い、いきなり触らないでくださいよっ!失礼なっ!」
ブンッ、と手を振り払われてしまった。
「グレンさんの思惑がよーくわかりました!つまりそういう事だったんですね!!
ボクと今日会ったこと、なかったことにしてください。
ボクは1人でいいんですからっ!!」
「待ちぃ、カイヤ」
メノウは勝手に盛り上がっていたジストを小突いて後ろに引かせる。
「お前、黒の国に何しに行きたいん?
事情も聞かずに放っておけんわ」
「だからっ!
もうアナタ達には関係ないって・・・」
「聞かせろや」
低い声に一瞬たじろぐ。
が、カイヤは強気に腕を組んだ。
「博士を助けに行くんです。
ほら、アナタ達には関係ない話でしょう?」
「博士・・・とは、クレイズの事か?
クレイズに何かあったのか?」
ジストは先程までの調子とは切り替えて真面目な顔になる。
そんな顔をされたら、虚勢を張る意味がない。
カイヤは本心のままにうなだれた。
「博士・・・黒の国の人に襲われたんです。
ボクは博士に逃がされました。恐らく、グレンさんも。
あの人何も言わないから・・・ボクだって、何がなんだか・・・」
「クレイズが?!
何という事だ・・・。グレンまで危険な目に合いそうになったというのなら、やはり三賢者狙いの何かがダインスレフにあるのかもしれない・・・!」
「あのチンピラな賢者は酒場におるんか?
えぇわ、少し話を聞く必要あるみたいやし、行ってくるわ」
「私も行く!
カイヤ、君も来てくれ」
「・・・なんで、他人のボクなんかに・・・」
「もはや他人ではない。
さっきも言っただろう? もう仲間だと」
ジストは明るく笑って見せた。
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