「うわああああっ!!」
カイヤがドサッと倒れると、細かい砂が舞った。
同じように尻もちをついたシャーレがきょとんとしている。
「ぐ、グレンさん!もうちょっと丁寧に着地してくれません?!」
「贅沢言うな。俺だってもうヘロヘロだぜ。
まさか赤の国まで来てるとは思わなかったもんでな・・・」
「こんなところでどうするんですか!
ボクが行きたいのは黒の国ですよ?!」
「ほら、オアシス。見えるだろ。あそこだあそこ」
「人の話聞いてます?!」
「俺の魔力が切れる前に辿り着いてよかったな。
あとはあいつらを見つけて事情を話すだけだ。行くぞ」
飄々とした口先だが、よく見れば彼の顔色が良くない。ここまで来るための転移魔法が響いているのだろう。
カイヤは渋々立ち上がり、砂を払ってグレンとシャーレを追いかける。
踏み入れたオアシスは、夕刻の賑やかさに包まれている。
何処へ行くのかと思えば、グレンは真っ先に酒場へ足を向けたのだった。
「ちょっと、グレンさん?!」
「水分補給だ、水分補給。
お前は“アードリガー”って名字の家を探せ」
「なんでボクが・・・」
「シャル、飲みに行くぞー」
「おじさんまたカケゴトする気でしょう・・・」
2人は去ってしまう。
取り残されたカイヤは苛立ちをぶつける相手を失ってため息を吐いた。
「アードリガーだって?
そりゃ、メノウはんとハイネちゃんのところの名前だねぇ」
いちばん大きな屋敷の老婆を訪ねると、聞き覚えのある名前が出たのだった。
「その人達の家はどこに?」
「オアシスの近くのね、お花が飾ってある家ですよ。
運がえぇですねぇ。珍しくメノウはんが帰ってきはってますさかい」
「ふーん・・・。
ありがとうございます」
老婆に会釈し、カイヤはその家へと向かった。
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