ポカンとするジストの目の前で、女の子はメノウに駆け寄ってくる。
彼がしゃがむと、その胸に突進するようにして抱きついた。

「おとん~!!
なんや、帰ってくるなんて聞いてへんかったよ、うち?!」

「あぁ。驚かせたろ思うて、・・・なんてな」

彼は飛びついてきた女の子をそっと抱きしめ返す。
剣か銃を振り回す姿しか知らなかった彼からは連想されない、意外な姿だ。

「め、メノウ、その子は・・・」

「だ、誰?!」

女の子はメノウの腕の中にすっぽりと隠れて様子を窺う。
彼と同じ、炎のような赤い髪。しかしその瞳は真っ青で澄んでいる。

「おとんの知り合いや。怖くない」

「お、おと、・・・?」

しゃがんでいたメノウは立ち上がる。
女の子は彼の脚に抱きついた。

「黙っててすまんな。
・・・このチビが“ハイネ”。娘やわ」

「チビちゃうもん!」

「む、むすっ・・・?!」

知られざる彼の正体に動揺が隠せない。

「き、君は・・・父親、だったのか!」

「あぁ。せやから言うたやろ、おもろいもんちゃうて」

確かに、一行が想像した存在とは違う、むしろその先を行っていた。
彼が見せてくれなかった手に光る指輪は、正真正銘“誰か”との結婚指輪だ。

「娘がいるという事は、ここに君の妻もいるのか?!」

悪気はなかった。しかしジストは確かに、目の前の父娘の表情が強張るのを見た。

「・・・おかん、いないよ。
うちが赤ちゃんの時に死んでもうた」

ハイネが静かに告げる。

「なっ?!
・・・す、すまない、私は何と無神経な・・・」

「いいや、姫さんは悪くない。
気にせんといて」

すぐにいつも通りの顔に戻った彼は、ハイネに手を引っ張られる。

「じじ、向こうにおるよ。会いにきたんやろ?」

「せやな・・・。
姫さん、こっちや」

親子に連れられ、ジストは未だ驚きを隠せないまま奥の部屋へ向かう。

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