「実に楽しみだ!
はてさてどのような乙女なのか」
「姫さんら、何か勘違いしてへん?」
「勘違い?
そんなもの、しようがないだろう。わかりきっているようなものだ。
照れなくても良いのだぞ!」
「だから、そういうんちゃうねんて・・・」
屋敷前の石階段を上がると、外で掃除をしている老女を見つけた。
「マシュー」
「はいよ。
・・・あら、あらあらあらメノウはんやないの!!
どないしたん、連絡もよこさんで!」
マシューと呼ばれた老女は驚いたあとにニッコリと笑った。
「あんま長居はせんのよ。
ツレがいるもんで、一言ビャクダンに言っとこ思うてな」
「お爺さんなら奥にいますよ。
・・・まぁまぁ、そこにおる小奇麗な方がお仲間かいな?
こんな何もないところに・・・お茶でも飲んでってくださいな」
「うむ!ありがたい。
私はジストという。今、メノウに仕事を依頼している者だ」
「そうかいそうかい!こりゃあ由緒正しい方のようだねぇ。
ささ、遠慮なさらずに。大したものは出せませんが」
マシューに手招かれ、2人は屋敷の玄関に入る。
「せや、せや。
“ハイネちゃん”も元気にしてますよ。メノウはん見たら喜ぶやろなぁ!
今、呼んできましょ」
マシューは老体なりの速足で奥へと引っ込む。
「ほほう、ハイネとな・・・」
ジストはニヤニヤと表情を緩め、肘でメノウを小突く。
ふぅ、とため息を漏らした彼は、そっと手袋を外した。
「ん?
君の素手を見たのは初めてのような・・・」
言いかけて、ジストは気が付く。
彼の左手には銀の指輪が輝いていた。
「君、その指輪は・・・」
「おとん?!」
廊下の柱の影から、幼い女の子が顔を覗かせたのだった。
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