「ほらよ。頼まれてたブツだぜ」

買ってきた野草や薬剤をテーブルに並べると、グレンは近くのソファにドサリと豪快に座る。

「確かに、頼んでた分全部だね。感謝するよ」

クレイズは布袋をグレンに差し出す。
受け取ると、コインの重みが手に乗った。

「にしてもよ、自分が野暮用で出かけてたんだったら自分で買いに行きゃよかったじゃねぇか。なんでわざわざ俺を使う?
自分で言うのも何だが、俺に任せるより安上がりだろ?」

「そうだったかもしれない」

グレンの向かいに座るクレイズは紅茶を口に運ぶ。

「そーいや、あの嬢ちゃんはいねえのか。お前の娘」

「もうすぐ帰ってくると思う」

ふと、グレンは引っ掛かりを感じる。

「なぁお前。ひょっとして、俺に買い物行かせたのは“物が目当て”じゃなかったんじゃねぇの」

ふ、と息が漏れた。

「君は察しが良すぎて不気味だ」

ティーカップをテーブルに置くと、クレイズは傍の本を広げて足を組んだ。

「帰った方がいいよ、グレン。
僕は負担をなるべく減らしたいクチでね」

相手の考えを読み合うような空気。
しばらくじっと観察するような目を向けていたグレンは、やがて大きくため息を吐いて立ち上がった。

「あいにくだが、俺は守られる性分じゃねぇよ。
お前こそ1人で大丈夫なのか?
・・・何か、“ある”んだろ。近いうちに」

「さぁ、どうかな。
まぁでも、僕と君はなるべく遠い場所にいた方がいい。
どうやら“連中”は賢者の力が欲しいみたいだからね」

カチャ、と向こうで扉が開いた。

「博士、只今戻りましたー!」

元気な声がする。

「タイムリミットだ。
グレン、君は裏の非常口から帰った方がいい」

「ったく。有名人もラクじゃねぇな」

裏口から去るグレンと入れ替わるように、カイヤが研究室に入ってきた。

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