「ねぇ、察しているようなの。どうしましょう」

明かりも付けていない保健室で囁く声。

『所長がご所望なのですよ。早急にお願いします。
・・・私としては存在も認めたくないですが、仕方がない』

片手に持つ小さな鉱石に語りかけるローディはクスクスと笑いを漏らす。

「そうね。私も早く片付けたいわ。
そろそろあなたが恋しいの、クライン。
ふふ、わかる?私の鼓動。あなたの声を聞いただけで・・・興奮してきちゃった」

鉱石を胸元に当てて彼女は恍惚とした笑みを浮かべる。
しかし彼女の熱っぽい言葉に対する返答はない。

「クレイズもね、可愛いのよ・・・
甘噛みくらいならいいかしら、って思ったけど、あまりにもあなたに似ているせいで・・・
ふふ・・・“壊さないで”そっちへ連れて行ける自信なくなっちゃって」

『悪趣味です。そんな事より、こう気安く“伝導”の魔法を使わないでいただきたい。
どこで誰に聞かれているかわかりませんよ』

「いいじゃない。退屈な仕事をさせられてるんだから、これくらいの娯楽は。
まぁいいわ。それじゃあここまでにしてあげる。じゃあね、ダーリン」

『気色が悪い』

冷たい言葉の後にプツ、と声が途絶える。



手元のグラスにワインを注ぎ、ローディはそれを手にしてユラリと立ち上がる。
おもむろに引き出しを漁り、重量感のある黒い塊を手に取った。

「“あの子”、こういう重要な時に限って顔を出したりするのよね・・・
その時は・・・その時、ね」

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