「命乞いの一言もないとは・・・見上げた精神ですねえ」
リビアンは興味深そうにコーネルを眺める。
後ろ手に手錠で拘束される彼は、それでもただじっと虚空を見つめていた。
「実はね、処刑の方法がまだ決まってないのですよ。
というか、今から私が決めるのです。
何がいいですかな。鞭打ち、絞首、磔・・・」
愉快そうにリビアンは書類にペンを走らせる。
「私はねぇ、私よりエラい人共がだーい嫌いなのですよ。
凄惨に痛めつけて殺してやりたいですねぇ。拷問にかけるのもアリですかな?」
「俺をどう甚振ろうと・・・何も変わらない。
俺には白状する事など何もない」
「でしょうね!」
リビアンの返答にコーネルはようやく気が付く。
「貴様・・・端から俺を殺すつもりで・・・?」
「言ってしまえば、私にとってもイオラ殿下にとっても暗殺者自身の身柄などどうでもよいのです。
宮殿側が汚点とするのは、“暗殺者を逃がした”という事実と、君の姉君がクロラ殿下に嫁ぐ事ですからね!」
姉の姿が脳裏を過る。
いつも余計なほどに世話を焼き、必要以上に笑って泣いていた面倒な姉。
亡き王妃の面影を残す姿。
「貴様・・・ッ!!
リシアをどうするつもりだ!!!」
「どうもこうも。ただ歴史の闇に消えていただくのみ。
教皇殿はクロラ殿下を次期教皇へ推していらっしゃる。故に妃を選んだわけですよ。
教皇殿が選んだクロラ殿下の妃・・・彼女の弟君が教皇の暗殺に押し入った。
世間体はどうなるでしょうねぇ・・・
それが第一皇子ルベラ殿下、第二皇子イオラ殿下の狙いでしょう」
リビアンは立ち上がり、コーネルを見下ろす。
「ま、それも私にはどうでもいい事ですけどね。
君が亡き後にゆっくりとここの皇族一家を葬るだけです」
扉が開き、ぞろぞろと兵士が入ってくる。
「さぁ、時間です。
遺言を考えておいてくださいね!」
仮面の下で何を考えているのかわからない人物だ。
さぞ面白そうに腹を抱えて笑うリビアンの姿は不気味だった。
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