宿の前には、兵士に羽交い絞めにされたコーネルと、それを見てうろたえるジスト、そして銃を構えるメノウがいた。

「貴様の罪を記した状が出ている。
おとなしく我々についてくれば手荒な真似はしない」

「ち、違う、コーネルはそんな・・・!
第一、我々は昨日ここへ来たばかりで――」

「おい、不法侵入だ。こいつらも連れて行け!」

「な、なんだって?!」

ジストの腕を引っ張ろうとした兵士の顔面を、メノウが素手で殴る。

「貴様・・・!!」

「えぇ度胸しとんなぁ、ワレェ?
さっさとそのあんさん離せや。せやないと全員ぶっ殺すぞ」

怖気づいた兵士だが、それでもコーネルを解放する気がないようだ。

「放せ、クソッ!!
貴様ら!!俺を誰だと・・・!!」

「さあて・・・
“姉君”の処遇はどうなる事やら?」

コーネルは蒼白な顔になる。
その一瞬の隙に、他の兵に思い切り腹部を殴られた。

「ぐっ・・・
・・・・・・」

「コーネル!!」

ジストの呼びかけも空しく、彼は気を失った。
チッと舌打ちしたメノウは銃のトリガーに指をかけた。

「させるな!!やれ!!」

兵士の合図で、背後の屋根から風切り音がした。
プツッと小さな音がする。

途端にメノウが崩れ落ちた。

「メノウ?!」

彼の首に小さな矢が刺さっていた。麻酔針だ。
唇を噛んだジストはついに剣を引き抜いた。
兵士も、ニヤリと笑って剣を抜く。

互いに振りかざした刃が打ち合う。
しかし一国の兵の技術にはジストも敵わず、防ぐだけで精一杯だ。
やがて兵の剣先がジストの心臓を狙う。

「ジスト、危ない!!」

その瞬間、閃光のように人影が割り込む。
振り下ろされた刃を素手で掴んで奪い取り、その流れで蹴りが舞う。
あまりの素早さに度肝を抜かれた兵はそのまま地面に倒れた。

「アンバー・・・!」

「なんだかわかんないけど、とりあえず王子を返してもらおうか!!」

斬られようが殴られようが、アンバーには効かない。
超越した治癒能力に戦く兵達だが、目の前の彼の弱点を傍らに見つけた。

「“聖女”だ!!
こいつも捕えろ!!」

倒れて動かないメノウの傷を癒そうとしていたサフィが兵に力ずくで捕らわれてしまう。

「きゃあ!!」

「「サフィ!!」」

コーネルと同じように乱暴に意識を奪われたサフィ。
残ったジストとアンバーが背中合わせで身構えるが、攻撃に出る間際で首元の疝痛に倒れた。

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