「リビアン様!」
羽帽子の男が会議室に入ると、集まっていた兵士が立ち上がった。
「これだけの人数がいれば十分。
盛大な鬼ごっこの始まりですね。ああ楽しみだ」
大笑いしそうな心を落ち着け、羽帽子の男――リビアンは席に着く。
「イオラ殿下からの承諾は得ました。
予定通り任務を遂行します」
いくつかの書類をちらつかせ、彼は説明する。
「目的は暗殺者の確保。・・・というのは表向きですね。
真の犯人など、とっくの昔にこの聖都から去っている事でしょう。
しかしそんな失態を教皇に知られるわけにはいかない・・・。
ここで今回の任務です。
運の悪い事に、この時期この場所に紛れ込んだ哀れな者達がいる。その中の1人が、なんと真犯人の顔と瓜二つだというじゃあないですか。
使わない手はないでしょう?」
つまり、真犯人の代わりに犯人を“仕立てあげる”。
この胡散臭い貴族風情の口から出た驚きの任務内容に、兵たちはざわめく。
「そんな事・・・
もしも公になったらおしまいだ!」
当然そう怒号が飛ぶが、リビアンは相変わらずにんまりと口元を歪めている。
「我々にはイオラ殿下という後ろ楯があるのですよ。
何も恐れなくていい。君達はただ素直に任務をこなせばいい。
気乗りしない者は降りてもよいのですが・・・この話を知ってしまった君達のその後がどうなるか、お察しでしょう」
逃げられない状況下、兵達は不服そうにただ首を縦に振った。
決まりです、と拍手をしながら喜ぶリビアンの姿が、兵達には悪魔のように見えた。
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