傭兵の隠れ家に戻れば、ラリマーがすぐに出迎えた。
「ほーら、当たったでしょ?
オンナのカン!」
「それはいいからさ、そこのソファ貸してくれない?
サフィを休ませてあげたくて」
あらあら、とラリマーは急いでソファを片付ける。
背負っていたサフィをそこへ寝かせたアンバーは、深く長い溜息をついた。
「一時はどうなるかと思った。
もう懲り懲り!」
「うむ!2人共無事でよかった!
コーネルも、すぐにやられるのではとヒヤヒヤしたものだ」
「喧嘩売ってんのか、ジスト!」
いつもの調子が戻りつつある事に、ジストは心底安堵していた。
しかしその後ろで扉が開閉する音がした。
「メノウ? どこへ行くのよ」
ラリマーが気付いた時には、彼は外へ行っていた。
不審に思った彼女は彼を追って外へ出る。
「要塞から戻ってくる最中も、あの傭兵・・・様子がおかしかったぞ。
塔で何があった?」
「それは」
ジストの心当たりはただ1つ、あの尋常ならざる力の解放だった。
だが、それを軽く口にしてはいけないような気がして、彼女は首を傾げて答えを濁した。
ソファで眠るサフィを、アンバーはじっと見つめていた。
彼女に寄り添って離れない彼の隣に、ジストが腰を下ろす。
「俺ってなんでここにいるんだろ」
覇気のない声が問いかける。
「俺がいても、なんの得にもならない。危害しかないじゃん。
・・・俺、やっぱりここにいちゃいけない気がする」
「馬鹿者!!何を弱腰になっているか!!
君がサフィを守らなくてどうする?!」
勢いのままの言葉の後、私には無理だった、とジストは恥じるように苦笑いをした。
そんな彼女の姿に、アンバーは表情を緩める。
「そうだね。サフィが必要とする限りは・・・
もうちょっと頑張ってみる」
彼の指が、サフィの髪を撫でる。
疲れ果てて眠る彼女の寝顔が少し柔らかくなった気がした。
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