「君が・・・やったのか?」

冷たい風に乗って血の匂いが漂う。
こみ上げるような悪寒を堪えて、真っ赤に染まった槍を持つ彼に問う。
振り向いた彼は小刻みに震えていた。

「ジスト・・・俺、」

「サフィはどこにいる?」

彼の傍にいつもいたサフィの姿がない。

「お願い、ジスト・・・
サフィを止めて・・・。俺はもう、これ以上・・・――」

コロシタクナイ。

声にならない声が訴える。
金色の髪の向こうから、絶望した琥珀の瞳が覗いた。

「どちらか片方が倒れたら共倒れ。なるほどな」

「どういう事だ、メノウ?」

「わからんか?
・・・アンバーは今、完全に操られとるんよ。サフィに」

「どうして?!
サフィは、誰よりも優しくて・・・――」

「俺をハメて、あの娘を攫った。目的は最初からあの娘の方だ。
――俺は時間稼ぎにされたわけだな」

つかつかと前に出たコーネルは剣を引き抜く。

「俺には“人形遊び”がお似合い、か。
行け、ジスト。このゾンビの相手は俺がする」

「しかし!」

「どうせ俺が行ったところであの娘の正気を呼び戻せはしない。
お前の役目だ」

コーネルをじっと見つめていたアクロは剣を構え直した。

「その傭兵と、向こうの塔をのぼれ。
道案内はここまでだ」

「アクロ・・・コーネル・・・」

「行くぞ。
サフィをなんとかせな、あんさんらの遊びが終わらんからな」

くっ、と息を詰まらせ、ジストはメノウを連れて塔へと走った。



「君達がいてよかった。
・・・俺だけじゃ、サフィを守れない・・・」

「はっ。甘えた事ほざくな、ゾンビ野郎!!」

影のように息の合った2人がアンバーの槍に対峙する。

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