アクロが剣を引き抜く。白い刃が冷たく光る。
コーネルは思わず目を疑った。そしてすぐに自分の剣が手元にある事を確認してますます混乱する。

――俺と同じ剣、カレイドヴルフ・・・?



「お、おい、侵入者だ!!
止めろ止めろー!!」

鎧づくめの兵士達が次々に武器を手にするが、それを振るう前にアクロが剣で一突き急所を的確に狙っていく。
その刃に躊躇いなど微塵もない。“殺し”の剣だ。
圧倒的な技量に開いた口が塞がらないジストは、自分の剣を引き抜く事を忘れていた。

彼は剣だけでなく、魔法にも長けているようだった。
重装備の兵には即座に詠唱した魔法を矢のように飛ばして応戦する。
見た事のない属性の魔法だった。

敵兵を薙ぎ倒すように、要塞の中の廊下を駆け抜ける。

「アクロ!
どこへ向かうのだ?!」

「中央塔だ。一度外に出る。こっちだ」

何を持って確信とするのかわからないが、迷いなくアクロは進む。

「なんや、回しモンとちゃうか?
ついてって平気なんやろか」

「フン。こんな手の込んだ誘導をする柄でもないだろう」

何故かコーネルにはそう思えた。
今までの仕打ちを考えると殺意すら芽生えそうなほどアクロを憎悪しているが、どこか否定できない、自分と似たようなものを感じるのだった。



比較的警備が手薄な門を一瞬で特定し、アクロはその場の兵を瞬殺したと同時に扉を開ける。
真っ白な雪が積もった中央広場が現れた・・・――はずだった。



急に立ち止まったアクロの背に思い切り突進したジストは慌てて後退して立ち止まる。
後ろからコーネルとメノウも顔を出すが、すぐに目を見開いて呆然とした。

折り重なる兵の山、山、山。
白いはずの雪は赤黒く染まり、地獄への入り口とでも表現したくなるような光景が広がっていた。
その死体の山の中にぽつんと1人、背を向けた人影がある。

「お、おい、あれは・・・――」

「・・・アンバー」

ジストが呟くと、人影がゆっくりと振り返った。

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