「やっぱり、メノウさんって赤の国の人だったんだね」

ソファで寝転がり、置いてあった週刊誌を読みながら誰となくアンバーが言う。

「何故それがわかる?」

先程の親類の不貞に対する衝撃を癒そうと熱心に剣を磨いていたコーネルが聞けば、アンバーはきょとんとする。

「だって言ってたじゃない、ラリマーさんが。“里帰りの時しか頼ってこない”って。
赤の国に里帰り、つまりそういう事でしょ?」

「故郷の関所を通れない“何か”を、奴はしでかしたのか」

「ま、そうなんでしょうよ。
傭兵なんて、そういう人ゴロゴロいるよ。俺は違うけど」

ピカピカに磨かれた白い刃に映る自分の顔を見つめていたコーネルは、かねてからの疑問を口にする。

「ゾンビ。お前も傭兵なのか?」

「そうだよ。元、だけど」

意外にもあっさりと帰ってきた答えに一瞬戸惑った。

「俺、この辺の生まれなんだ。
要するに、この辺で傭兵してたらミスって死んだのさ」

「一体何をしくじったという?」

「それは・・・
・・・まぁ、そのうち教えてあげるよ」

パタン、と週刊誌を閉じ、アンバーは起き上がる。

「ていうかメノウさん遅くない? もうこんな時間・・・。
王子は寝なくていいの?」

「あの傭兵が飼い主のところに戻るまでおちおち寝ていられるか」

「朝まで帰ってこないんじゃない。
あの2人、ど~見てもアレじゃん、アレ。
酒場だけで物足りる感じには見えないなぁ~♪」

「不純だ・・・汚らわしい!」

「ピュアだねぇ、王子は」

「煩いゾンビ!!心臓に杭を打ち込むぞ!!」

「わぁぁ、お助けぇ!!」

「なんや、まだ起きとったんか」

突然の第三者の声に、アンバーとコーネルは飛び上がる。

「うわぁ、メノウさん!!
は、早かったね・・・?」

「他の2人は?」

「ジストとサフィなら隣の部屋だよ。もう寝ちゃったんじゃないかな?」

「あの馬鹿、何が何でもあの娘と同室がいいと喚きやがって・・・。
身の程を弁えろと何度・・・」

ブツブツと文句を垂れ流すコーネルの背中に奇妙な笑いがかかった。
この王子、幼馴染の男装を未だ見抜いていないらしい。

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