街中も道の角という角に警備兵が配置されていた。
聖都の民は出歩きこそしてはいるが、おどおどと落ち着かない雰囲気である。
「異様ですね・・・。
こんな聖都、見た事ないです」
サフィが思わず呟く。
建物の裏道を選んで歩くシリカは頷く。
「何日か前、・・・ごく最近の話です。
皇族が住む宮殿に暗殺者が忍び込んであわやという事態になったらしいです。
しかも、その暗殺者はまだ捕まっていない。だから、聖都に“入れさせない”、聖都から“出させない”という事でこうなったとか」
犬に見破られていますけどね、とシリカはイタズラっぽく笑う。
「それってつまり、まだこの聖都内に犯人がいるかもしれないってこと?!
こっわ~・・・」
アンバーはわざとらしくそう反応して見せるが、本人は若干面白がっているようにも見える。
「・・・クロラは、無事なのか?」
コーネルの口から出た名前に、シリカは振り返る。
「第三皇子クロラ様ですか?
あの方は今臥せっておられて、もう数年単位で人前に出てきていないとかって・・・。
旅の方でクロラ様をご存じな方って珍しいですね?」
「・・・まあちょっとした縁でな」
余計な縁だが、とも付け加えられる。
「ともあれ、ラリマーさんは酒場で待ってます。
もう少しで着きますよ。ほら、あのお店」
まだ日は高いが営業しているようだ。
兵士の目を掻い潜り無事に店に着いた一行は、シリカに案内されて店内へ入る。
「やぁん!久しぶりじゃないのぉ、メノウ!!」
跳ねるように立ち上がり駆け寄ってきたのは、長い緑髪で澄んだブルーの瞳を持つ妖艶な若い女性だった。
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