「あぁ、よかった。諦めて帰っちゃったかと思いました」
間近で見た少女はサフィと同じくらいの年だ。
薄い桃色の髪に氷色の瞳をした、平たく言えば美少女である。
「お久しぶりです、メノウさん。シリカです。
ラリマーさんの指示でお迎えに来ました!」
「はー・・・背伸びたな。
相変わらずあいつにパシられてんねんか」
「ぱ、パシリじゃないです!
私は自分から・・・」
言いかけて、傍で目を輝かせている人物にいきなり手を取られる。
「う、美しい!なんと美しい乙女!
おいメノウ!どういう事だ!!というか、どういう関係だ!!」
「え?あ、あの、メノウさん、こちらの方は・・・?」
動揺して赤くなるシリカに本能のまま近づいたジストをメノウが小突いて引き離す。
「この馬鹿・・・」
コーネルの呟きが冷たい空気に消える。
「本題なんですけど、見ての通り今聖都は厳戒態勢で・・・
実は、ここのギルド所属の傭兵も、本当は聖都から出る事は禁止されているんです」
どうやらシリカも傭兵らしい。
この警備の穴を的確に見抜いて外まで導いたのが、先程から足元でメノウに纏わりついている真っ白な犬だという。犬と言うよりも狼というべき大きさだが。
「まぁこの状況の理由は後で聞くとして・・・
んで、どうすりゃいい?」
「案内します。こちらです、皆さん!」
犬が意気揚々と先頭に立って、非常用扉の中に吸い込まれていく。
「お、おい、犬なんかについていって大丈夫なのか・・・」
思わずコーネルが不安の声を上げるが、シリカはニコニコと動じない。
「大丈夫ですよ。サードの目と鼻は確かです。
無事に抜けられたら、たっぷり撫でてあげてください!」
「い、いや、俺は遠慮しておく」
どこか恐る恐るといった風のコーネルに首をかしげるアンバーとサフィに、ジストは耳打ちする。
「コーネルは動物嫌いなのだよ」
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