翌朝。
すっかり体調がよくなったジストは誰よりも早く起きて窓辺に立つ。
「ジストさん・・・?」
毛布から顔を出してサフィが声をかける。
「おお、サフィ!
おはよう。素晴らしい朝だぞ!」
吸い寄せられるようにジストの隣まで行って窓の外を見ると、眩しい朝日が積もった雪を照らして宝石のように輝かせていた。
「まぁ、綺麗・・・」
「君の髪と同じ色だな!
実に美しい」
はっとしてサフィは寝癖混じりの髪に触れる。
そうしてから、薄くにっこりと微笑んだ。
「嬉しいです。私、この髪の色のせいでいろいろな人に迷惑をかけていたから・・・」
「迷惑だと?」
サフィは曇った窓ガラスに指先を滑らせる。
「あんまりない色の髪だから・・・気味が悪いって。
育った教会の人達にそう言われて泣いていた私を庇ってくれていたのが、イアス兄様だったんです」
懐かしそうに彼女は目を細めた。
「イアス兄様が独り立ちしてから、私は独りぼっちでした。
もう庇ってくれる人がいないからって、一層辛く言われた事もあります。
・・・でも、アンバーさんがそこから私を救ってくれた。
救われたから、救いたいと思って・・・。
だけど私、自分の身勝手でジストさんを巻き込んでしまいました・・・。
ごめんなさい」
深々と頭を下げられるが、ジストは微笑む。
「いいのだ。気にするな。むしろ、この村を救う事に手を貸せた事が嬉しい。
もっとも、私は毒を飲んで倒れていただけだがな!」
ははは、と笑い飛ばす。その明るさが太陽のように眩しい。
「それに、反省した。
私こそ身勝手に振る舞ってしまっていた。昨夜、コーネルにたっぷり絞られてしまったのだよ」
「王子様、すごく頑張っていたんですよ。
魔法で一気に3人もやっつけてしまったんですもの」
「うーむ。聞いた事はあったが見た事はなかった。
コーネルは魔法が大層苦手でな。使う事からしてすでに諦めていたというのに」
「きっと、ジストさんを守りたかったんだと思います」
「そうだな。そうかもしれない。
・・・たまには褒めてやるとするか!」
日が高くなってくる。
今日は天候に恵まれそうだ。
「朝ごはんができましたよぉ。どうぞぉ」
ティファニーの呑気な声がする。
「いけない、手伝わなきゃ!
すみません、お先に!」
サフィは足早に厨房へ向かった。
あの清廉な少女が狙われる所以はなんなのか。
ジストにはまだわからない。
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