「もう大丈夫です。
一晩寝れば治りますよ」
出来立ての薬を飲まされてベッドに寝かされるジストはスヤスヤと眠っている。
「いやあ、本当にありがとうございます。
これで村の住人を救う事ができます!」
イアス自身も復調したようで、すぐにでも住人の治療に取り掛かろうと薬の準備を始める。
「イアス兄様。原因は井戸の水です。
ジストさんが身を挺して証明してくださいました」
神妙な面持ちでサフィはイアスに報告する。
「そうか、井戸水・・・。なるほど、盲点だった。
当たり前に使っているものにそんな事を・・・。一体誰が・・・」
「フン。どうせさっきの三人衆だろう。
悪知恵だけは働きそうな連中だ」
ソファで寝転んでいたコーネルが吐き捨てるように言う。
「あいつら、何なん?
アンバー、お前なんか知っとったみたいやけど」
「あいつら、ね。
あいつら、なんでか俺とサフィを追いかけてくるんだ。
正確にはサフィを、かな。
ほら、俺とメノウさん達が初めて会った時。あの時もあいつらに追われてたんだ。
もうずーっと。2年か、3年くらい経つかな? ねぇ、サフィ」
「はい・・・。
どうして私が狙われているのか、私自身もわからなくて・・・」
「そんな無責任な話があるか。
原因になるものか事か、本当に思い当たらないのか」
「や、やめてよ王子。
俺達、本当に身に覚えなんかないんだから・・・」
コーネルの不機嫌そうな声におろおろとするサフィの頭をアンバーがそっと撫でる。
「妙やな」
ジストが眠るベッドに背中を預けてメノウは腕を組む。
「サフィを狙う理由、この村に毒を仕込む理由。
・・・繋がるんか?
そもそもサフィがここへ来てこの村を救うなんて保障ないやんけ」
「って事は、何か別の目的が・・・?」
言いかけて、もぞもぞと毛布が動く。
「ん、・・・んー?
ここは・・・」
「おう、気付いたか」
ジストは目をこすりながら起き上がる。
「ハッ。この馬鹿が。死ぬところだったんだぞ貴様」
ここぞとばかりにコーネルが突くが、ジストは寝ぼけた顔で首を傾げた。
「ジストって、勇気あるというか向こう見ずっていうか。
俺に飲ませればよかったのに。ゾンビに効く毒か知らないけど、もしもの時も怖くないよ、俺の体なら」
「だ、駄目ですよアンバーさん・・・!
そ、そういうのは、その・・・!」
「なるほど、その手があったな。
いやいや、心配をかけて申し訳なかった。次からはアンバーに頼む事にしよう!」
「冗談だったのにぃ!!」
なんとなくその場の空気が和んだような気がした。
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