教会の裏手に回る。
石でできた墓地が並んでいた。作られて間もないものも多いようだ。
供えられた花束達が雪を被って寒々しく横たわっている。
石垣の井戸を覗き込むが、真っ暗で何も見えない。
滑車を回して井戸の水をくみ上げてみる。
「メノウ。井戸がどうかしたのか?」
「大抵、こういうよくわからん病気っちゅーんは“水”なんよ」
カラカラと音を立てて樽が上がってくる。
なみなみとくまれた透明な水が現れた。
「イアスは、患者の共通点は“この村の住人”だと言っていた。
なるほど、ここに住まう者達なのだから、皆等しく使っている・・・。
しかし、見た目は何も変なところはないな?」
確かに、この気温で冷え切っていてとてつもない冷たさをしているが、色味も匂いも何もない、ただの水だ。
「さーて・・・どう調べたもんかね。
まさか飲むわけには・・・」
ゴク、と音がする。
隣のジストが水を飲んだのだった。
「姫さん?!」
「うむ、うまい。ただの水だな!」
さすがに頭を抱えるより他にない。
呆れかえったメノウはジストが手に持つ勺を取り上げて額を小突く。
いて、とジストは目を瞑る。
「馬鹿か、お前は!
なんで飲んでんねん!!毒やったらどうするん?!」
「なに、慌てるな!この私が身を以て証明してやろう。
それに、これから薬の材料を取りに行くのだ。もし私の身に異変が起きたら、ついでにその薬を貰えば問題ない!」
「アホ・・・」
相変わらずの尊大な笑いを湛える彼女に、彼はもう何も言えなかった。
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