物々しい雰囲気。
しんしんと降る白い結晶。不気味なほどに音がない。
聖都アルマツィアからほど近い港村であるカルル村。
案内をするつもりが、アンバーは首を傾げる。
「おっかしいな~・・・
怖いくらい静かだよ」
そういえば、外を歩く村人がいない。
何かを警戒するように扉を固く閉ざし、窓も閉めきっていて中の様子が伺えない。まるで人の気配がないのだ。
「妙です・・・
いつもなら活気がある村、なんですけれど・・・」
サフィも違和感を覚えているようだ。
「ねぇ、サフィ。確か、君はここの教会の人と知り合いだったよね?
教会の人に事情を聴いてみようよ」
「そうですね・・・。そうしましょう。
皆さん、こちらです」
アンバーとサフィに導かれ、一行は村の奥へと向かう。
年季を感じる外壁の小さな教会の前に出る。
そこで一行は村人の姿を見たのだった。
「おかあさん、くるしいよう」
「もう少しよ、頑張って・・・」
小さな子供を抱きかかえる母親らしき女性。
ぐったりと彼女の腕に身を委ねるその子供は真っ青な顔をしていた。
「どうなさったのですか?」
躊躇いなくサフィが親子に問いかける。
すると、女性はすがるような顔で子供を抱きしめた。
「教会の方ですか?」
「い、いえ、私は」
旅の者です、と告げると、女性はガクリとうなだれる。
「旅のお方。この村にあまり長居しない方がいいです。
今、この村では流行り病で倒れる人が多く・・・。
治療してくださる神父様も過労でお倒れになってしまわれて、もう私達、どうしたらいいか・・・」
「神父・・・まさかイアス兄様が!?」
「イアスとは誰だ、サフィ?
君の兄か?」
ジストが尋ねるとサフィは首を振る。
「実の兄ではありません。私が育った教会で、私によくしてくれた人で・・・。
すみません、ジストさん。少し教会へ寄ってもいいですか?」
「なに、構わない。教会に事情を聴きに来たのだからな!」
快い返事に感謝しつつ、サフィは速足で教会の扉をたたいた。
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