ベディヴィアの港にその2人はいた。
「アンリ先生、いつもボクが出張について行きたいって言うと断るのに・・・
今回に限ってどうして?」
「先輩に頼まれましてねぇ。
なんでも、先輩が数日野暮用で不在だから、その間のカイヤさんを面倒みてくれ、と」
「博士ってば、またボクを子供扱いして」
むぅ、と頬を膨らませつつもカイヤは満更でもない様子だ。
代金を支払って桟橋を渡り、アルマツィア行きの船へ乗り込む。
船内の一室を借りて荷物を下ろすと、カイヤは好奇心に突き動かされて船内を見学しに部屋を飛び出した。
「ちょ、カイヤさん!
勝手に・・・」
「いいじゃないですか!
ボク、船って初めてなんです!!」
トタトタと走り去る教え子に思わず頭を抱える。
甲板で早朝の潮風を一身に浴びる。
いつもの閉塞感しかない教室から解き放たれたカイヤは伸び伸びと腕を広げた。
そんな心地よい気分の最中、後ろの船客の雑談が聞こえた。
「知ってらっしゃる?
昨日のアルマツィア行きの便、突然の嵐で沈没したんですって!」
「まぁ、それ本当?!
この船は大丈夫かしら?」
「なんでも、悪党がお客の中に紛れていたんですって!!
怖いわぁ・・・」
「やだもう、縁起でもない。やめてくださいな」
カイヤは何も言わない。
ただその会話が気のせいである事を願って遠い目をするばかりだ。
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