「う、ううーん・・・」

呻いてからゆっくり目を開けると、その視界に貝殻が映る。
どうやらそこは砂浜のようだった。

「気が付かれましたか、ジストさん・・・?」

サフィの声がする。
彼女に背を支えられて上半身を起こすと、夜空と海が広がっていた。

「ここは・・・
私達は一体・・・」

「よう、気が付いたか」

ザッ、ザッ、と足音を鳴らして近づいてきたのは、覚えのある男だ。

「グレン?!
何故君がここに?!」

長身の彼はジストに視線を合わせるようにしゃがむ。

「俺も船に乗ってたんだよ。
ったく、無茶な魔法使いやがって。おかげで俺が息切れだぜ」

「グレンさんがこの孤島まで召喚術で運んでくださったそうです。
私達、助かったんです!」

「召喚術で運ぶ・・・?!どういう・・・」

「どーでもいいだろ。それより、お仲間に早く顔見せに行ってやれや?
あんたが一番寝坊だぜ」

クハハ、と笑いながら彼は去っていく。向かった先には焚火の明かりがあった。





大きな炎を囲むのは船客達だ。先程の混乱から解放されて安堵したように談笑している。

「気ィ付いたか」

ジストを見たメノウがいつも通りの調子で声をかけてくる。

「私はあの後一体・・・?
うっ!」

「座れや。魔力使いすぎて疲れとるやろ?」

サフィに支えられつつおぼつかない体をゆっくりと座らせる。

「無茶するよねぇ、ジストも。
でもグレンさんが偶然いてくれて助かった!
凄かったんだよ。転移魔法でしょ、アレ?」

「この大人数を運ぶにはここが限界だったけどな。
ホラ、あんたらが船ぶっ壊したのはあの辺りだ。大して遠くねぇだろ?」

グレンが指を差したところには、派手に船体が折れて先端だけが海面から覗く船の残骸がある。

「朝には代わりの船が港から来るらしい。今晩は野宿だな!クハハ!」

「グレンさん、怪我は大丈夫なのですか・・・?
しかも、こんな無理をなさって・・・」

「嬢ちゃんの治癒魔法が効いてる。まだ本調子じゃねぇけどもう何ともねぇよ。
礼だ、礼。気にすんな」

「よかった・・・
ありがとうございます、グレンさん」

「クク、惚れちまうぜ、そんなに微笑まれたらよ」

「助けてもらってありがたいけどサフィは渡さないよ、グレンさん!」

ケラケラと笑う。
ふと、ジストは辺りを見回す。

「コーネルはどこだ?」

「あんさんなら向こうの海岸行っとるで。1人にさせろ、だと」

「コーネル・・・」

フラッと立ち上がったジストはゆっくりとその場から離れていく。

「ジストさん!まだ安静に・・・」

「言っても無駄やて。行かせたれや」

彼女の後姿が暗がりに消えていく。

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