「こンの・・・!!」
ギギギ、と槍の柄が軋む。キンッ!と刃物を弾き飛ばせば、間髪入れずに短剣の猛攻が襲いくる。
アンバーは目の前の青年が繰り出す刃を短槍で退けるのに手一杯だった。
「アンバー!!
コーネル!!」
駆けつけたジストが叫ぶ。その眼前に広がる光景は、見覚えのある青年とアンバーが武器を打ち付け合う姿、そして華奢な少女が放つ魔法に翻弄されるコーネルの姿だった。
「め、メノウさん!!助けて!!
俺じゃ分が悪いよ!!!」
情けなく泣き言を漏らすが、当のアンバーは素人とは思えない槍捌きで次々と剣撃を弾き返す。
この怒涛のような剣撃を繰り出す者に見覚えがあった。
「メノウ!!まさかあの者、以前森で出会った・・・?!」
「因縁つけに来たんかいな・・・
えぇわ、相手したる。退け!!アンバー!!」
瞬時に素早く身を翻したアンバーと代わるように、疾風のような速さでメノウが割り込む。
「もう!剣早すぎ!!あんなの生身じゃ受けられないよ普通!」
「アンバーさん、今魔力を送ります・・・!」
フワッ、と淡い光をサフィが送り込むと、アンバーの体の傷が瞬時に消え去る。
「私はコーネルを助ける!行くぞぉ!!!」
ジストが剣を引き抜くと、宝剣が白い光を放った。
「キャハハハ!!
エレスぅ、この人達ちょっと強いよぉ?
イジメがいがあるよねぇ!!」
「はい、フロウ様!!
今度こそこの男の息の根を止めてみせます!!」
「じゃあねぇ、フロウはねぇ、このいちばん弱そうなお兄さん殺しちゃう~!!」
「だ、誰が一番弱そうだとこのアマッ!!!」
易々と挑発に乗ってしまったコーネルの脇にジストが駆けつける。
「何故剣を振るわない、コーネル?!」
「くっそ・・・!手が思い通りに動かない・・・!」
見れば、彼は剣の柄にかけた手を震わせている。
ジストにはその原因がすぐわかった。彼を後ろに押しのけ、自らが前に踏み出した。
「何をする?!」
「君は傷だらけだ!!下がってサフィに回復してもらうのだ!!
この見目麗しい乙女は私が直々に制裁してやろう!!」
「こんな時にふざけた事を・・・!!」
「私の風の刃を受けてみろォ!!うりゃあああ!!!」
宝剣が風を纏い、敵の少女が放った炎の球を吹き消す。
そのまま刃を振り下ろすと、衝撃波が真正面に走った。
「フロウ様ッ!!」
メノウと剣を交えていた青年が反射的に衝撃波の前へ飛び込む。
少女の身代わりにそれを受けた彼は、鋭利な風の刃に斬られて血を流した。
「くっ・・・!!
どういう事です・・・?!この前はあれほど無知だった人間が・・・!!」
「あの時の私とは違うのだ。
受けよ!!私の怒りの暴風をッ!!!」
「アホか!!
海の上で暴風なんざ起こしたら・・・!!」
「え?」
時すでに遅し。
ジストが詠唱した風の魔法は船の周りに風の渦を作り・・・――
「しまった!!沈没する!!!」
「馬鹿か貴様はァ!!!」
うわあああああ!!!と悲鳴が嵐に巻き込まれていった。
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