彼は閉店間際の店で野草の束を買う。

「よう。また賢者さんの使いかい?」

「あぁそうだ。まったく人使いが荒い野郎だぜ」

先程儲けた金を店主に渡すと、グレンはさっさと外へ出る。
夜風が冷たい。盛り場の喧騒で火照った体に染みる。
柄にもない代物を抱えて夜道を歩く彼はまた煙草を手にした。



暗い街道、ふと嫌な気配を感じる。
火をつけようとした煙草をしまい、彼は注意深く周辺を見渡す。

(なんだ?
今、どっかから俺を見てる気配が・・・)

色男は辛いぜ、と適当な冗談が脳裏を過るが、どうも様子がおかしい。



「マスター」

「やっちまえ」

パァン!!
と、破裂音が響いた。





(おいおい、嘘だろ・・・)

食らった衝撃で倒れる瞬間に、グレンは先程出会った妙な少女の言葉を思い出す。
ドサ、と地面に倒れてから、自分の肩から血が流れている事に気が付く。
もし後数センチ傷がずれていたら致命傷だった。本当に死んでいたかもしれない。
無意識のうちに咄嗟に構えた事が幸となり、その一発の弾丸は何とか耐える事ができた。

激痛と流血の量で意識が朦朧としてきたところで、覚えのある男女2人の声を聞いた。

「機関の意向もよくわからねぇが・・・
それ以上に俺様はコイツをぶっ殺したい。忘れたとは言わせねぇぞ、あのゲームをな!」

「マスター、静かに。人が来る前に即座に拘束すべきです」

「わーってる、わーってる。
シーラ、お前少し生真面目すぎねぇか」

横たわるグレンに手を伸ばしたところで、反射的に女性の方が遮る。

「人が来ます、マスター」

「ちっ・・・!
覚えてろよこの野郎!」

2人組はすぐさま木陰に姿を消した。

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