終業の鐘が鳴る。
授業を終えたカイヤは机の上に広げていた教科書を閉じ、筆記用具を手早くまとめる。
「ね~ぇ、レーゲン先生のうちのカイヤちゃん、さっきのテストどうだったぁ?」
悪巧みでも考えていそうな笑みを顔に貼りつけた生徒達がカイヤの机の前を陣取る。
周囲の生徒に比べカイヤは幼い。その生徒達も、カイヤより年上のようだ。
「カイヤちゃんは天才だからあんなテストはチョロいのかしら?」
「どうせまた満点よねぇ!だって先生達のご贔屓だもん。
いいよねぇ。ラクして進級できて!」
「私らなんか、どれだけ媚び売ってもいい評価もらえないし。
わざわざ努力してここまで進級してきた私らって不憫よね!!
どうせ馬鹿にしてるんでしょ? カイヤちゃん!」
カイヤは何も言わない。無表情で聞き流している。
「あれぇ、聞こえてないの?なんとか言いなさいよ。
それとも、小さすぎてまだ耳が発達してないのかしら!!クスクス」
「やめなさい」
絡む生徒達の後ろから青年がやってくる。
「ほーらきた。よっぽどお気に入りなのね、この子の事!」
吐き捨てるようにそう言うと、生徒達はプイッと顔を背けて教室を出て行った。
「大丈夫です? カイヤさん」
堪えるように握りしめた拳から力を抜いて、カイヤは微笑む。
「平気ですよ、あんなの。
アンリ先生も庇ってくれなくていいんですよ?
これ以上ボクの肩を持つと、先生まで嫌われちゃいますから」
教科書と筆記用具を抱え、カイヤはペコリと頭を下げて足早に去って行った。
その小さな背中を見送る彼は、ふと彼女の机に目を落とす。
教科書の下に隠されていた傷を指でそっとなぞった。
“特進科のはぐれネコ!”
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