「そんな馬鹿な。
あのコーネルが街の・・・しかも裏路地で人殺しだと?
有り得ない!」

路地裏での惨殺事件は翌朝にはもう話題になっていた。
目撃者はおらず、犯人に関係する手がかりとなったのは死ぬ間際で賊が書き残したメッセージ、“Prince Wind”の文字だけ。
この呼び名は国民がコーネルを呼ぶ時の愛称のようなものだが、一国の王子がわざわざ夜中に賊を殺す事件を起こすなど現実的ではない。
ところが肯定派も少なからずおり、その理由として“昨夜から王子が家出している”という本当か嘘か曖昧な情報がある。

「コーネルはそんな奴じゃない!!
確かに、彼は野蛮な連中をよく思っていない。排除したいと常日頃から思っている。
・・・しかし自ら手を下す勇気のある奴ではない」

「・・・それ、庇ってるのかどうか・・・?」

アンバーのツッコミを余所に、ジストは随分と憤慨しているようだ。もっとも、幼馴染に殺人容疑がかけられているのだからそう思わない方がおかしいともいえるが。

「陰謀かもなぁ。
あんさんの名誉ぶっ壊してなんの得あるんか知らんけど」

呑気に銃を整備しているメノウの背に向け、それだ!とジストは指をさす。

「王子様・・・ご無事だといいですけれど・・・」

サファイアがぽつりと呟く。

「レムリアさんの事もありますし・・・
もしお一人で本当にお城から出ていらっしゃるなら・・・早く見つけないと・・・」

「さすがに王子はお城の人達が探してくれてるでしょ。
俺達は早いとこレムリアっていう人を探してさ。
・・・あれ、探して見つかったらどうするの?」

「もちろん、共に行くのだ。黒の国に!」

「く、黒の国、ですか?」

驚くのも無理はない。黒の国は、この青の国と正反対の位置ともいうべき遠い場所にあるのだ。世界を横断する覚悟がないと、あの国にはたどり着けないだろう。

「黒の国に向かい、我が城を落とした犯人を見つけ出す!
その者を捕えたらミストルテイン城復活を宣言するのだ!!はっはっは!!」

「め、メノウさん、いいの?
なんか、ジスト1人ですごく盛り上がってるけど・・・」

「別に。そもそも姫さんが城に戻らんと、この仕事が終わらん。
しゃーないわ」

半ば諦めたように聞こえる答えだ。
君がいいなら、とアンバーは引き下がった。

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