マオリを屋敷に送り届けた後、一行は宿を取りに行く者とギルドへ行く者とでわかれる。
夜が更けるまでには戻ると告げ、メノウはジストを連れてギルドへ向かった。
「さすがだな!
お前ならあっさりやり遂げてくれると思っていたさ」
トリスは上機嫌で報酬を手渡してきた。
それを受け取るメノウの隣にいたジストが身を乗り出した。
「聞きたい事があるのだが」
「なんだい?
それなりの範疇なら聞かせてやるよ」
「最近、三賢者にまつわる問題事はなかったか?」
トリスはきょとんと目を丸くする。
「お前率直に聞きすぎやて・・・」
「回りくどい言葉遊びをしている暇はないのだ!」
焦る様子のジストに顔を向け、トリスは首を傾げる。
「問題事、ねぇ・・・。
そりゃあ、召喚の賢者がまた美人局に引っ掛かって黒服に追われてるって話なら有名だけど・・・
それ以外は特にないな。逆に聞くが、何かあったのか?」
「精霊の賢者についてだ。
彼が今どこにいるのか、調べる方法はないだろうか?」
「精霊の賢者・・・。あぁ、レムリアさんの事か。
あの人なら緑の国の陥落した城で王子の教育係をしていたって・・・」
「その王子が聞いているのだ」
しばらく沈黙した後、トリスは仰天して仰け反った。
「なんてこったい! 君が王子だったのか!!
おいおいメノウ、一体こりゃあ何の冗談だぁ?!」
「せやから、こっちにもいろいろあるんやて」
答えるのも面倒そうなメノウは傍の椅子に座った。
「いちばん身近にいた王子が知らないんじゃ、うちらも・・・。
でもそういえば、城の陥落の後に彼が公の場に出てきた事はないな。
ほら、よくあるだろ。会見っていうのか?
あれだけの大事件の後にそういった報告の場がないっていうのはおかしな話ではあるな。
彼は確か、王家直属の従者だったろ?」
「あぁ、そうだ。彼は私が最も信頼する従者だ。
・・・そんな彼が消えてしまった。遺体も出ず、行方もわからない・・・」
「事件に乗じて攫われたんじゃないのか?」
「攫われた・・・やはり・・・」
存在を狙われるだけの知識と力がある者だ。そう考えない方が不思議なくらいである。
「私が必ず見つけ出す!
待っていろ、レムー!!」
俄然気合いが入ったのかジストは飛び出していってしまった。
「あーあー・・・
手がかり1つも聞かんでどないすんのやろ」
「ははは。お前も苦労しているんだな」
億劫そうにメノウは席を立った。
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