不埒な橙の照明が照らすそこはなんとも不健全な雰囲気を醸し出していた。
部屋の面積に合わないほど大勢の者が杯を交わしたり賭けに興じていたりと、秩序の裏のような世界がそこには広がっている。
「下品ですわ」
顔をしかめるマオリの文句を聞かされながら、盗賊が彼女を引っ張ってある場所へ向かう。
部屋の一番奥で妖艶な女性を脇に抱えた中年の男が、酒を呷った後にこちらを見た。
「ホークス様。
見てくださいよ、上物ですぜ。へっへっへ」
「ほーう?」
ソファにふんぞり返っていたその男は立ち上がり、マオリをまじまじと観察する。
「あー嫌ですわ。酒臭い。
近付かないでくださいまし」
「おい、賊野郎共。
この女、どこの女だ? 随分育ちが良さそうなお嬢ちゃんじゃねぇか?」
「王族分家の娘だそうで。
下衆な一族が命乞いで置いていった哀れな女ですぜ」
「はっはー!!そうかそうか!!
捨てられたんだな。可哀想に!!」
「こんな掃き溜め、願い下げですわ。
わたくしもう帰りますわ」
「帰るって、どこへだ? お嬢ちゃん」
そろり、と男の手がマオリの肩を抱く。
ゾクッと鳥肌が立った。
「可哀想な嬢ちゃんは俺が可愛がってやろう。
俺の隣に座れ」
「んもう!!
汚らわしい手でわたくしに触れないで!!」
すぐさまマオリの鉄拳が飛ぶ。男はグェ、と声を漏らした。
「ってーな・・・
このアマッ!!」
「痛いですわ!! 乙女の髪を引っ張るなんて野蛮!!」
「って!!
蹴りやがった、こいつ蹴りやがったな?!
許さねぇ!!ボロボロにしてやる!!」
「よせよ、ホークス。
女はがっつくと逃げる生き物だぜ?」
優雅にグラスを傾ける者がいた。男と向き合う形で座っていたもう一人のその男は、トランプを弄んで煙草を吹かす。
「こんな掃き溜めに捨てられちまった宝石だ。
まぁ座れよ。俺達と同じゴミになりたくなかったら、その綺麗な脚をおとなしくさせておくんだな」
「わたくしに指図するなんて、随分じゃありませんこと?」
「そりゃあお前、俺は天下の賢者様だぜ?」
サングラスの向こうで、彼の鋭い瞳が光る。
「それじゃ、俺は退散するぜ。じゃあな、ホークス」
「おい待てグレン!!
貴様、逃げるんじゃねぇだろうな!!」
「イカサマ野郎に渡す金はねぇぜ、クハハッ!!」
サングラスの男は脱兎のごとく逃げ出した。
「チッ。時間の無駄だったな」
「・・・博打ですの?」
「なんだぁ? 興味あるのか、お嬢ちゃん?
ヒヒッ・・・教えてやろうか」
「そうですわね。獣臭い中年親父にわたくしの純潔を奪われるくらいなら、むしろ染まった方がよくってよ」
「潔いお嬢ちゃんだな・・・。
いいぜ、それじゃあ賭けてやる。俺に勝ったらお嬢ちゃんは解放だ。俺に負けたらお嬢ちゃんの全てを捧げてもらうぜぇ」
「フフッ、望むところですわ!! いざ!!」
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