青の国の王城の中庭、メイドが1人掃除をしていた。
少しの間箒を事務的に動かしていたが、やがてそのメイドは持っていた箒をじっと眺めた後に思い切り振り回し始めた。
「もう、グレーダったら。
またサボっているの?」
通りかかったリシアが、メイドに話しかける。
箒が風を切る音を鳴らしながら、メイドのグレーダは億劫そうに王女の方を向いた。
「あぁ、王女。どうも」
「前々から思っていたけど、あなたってメイドよりも騎士団が向いているんじゃないかしら」
「嫌っすよ。訓練とかダルいっすもん」
「不思議ね。なんだかんだ文句を言いつつも、あなたがここへ来てもう10年以上経つわよね?」
「別に居たくて居るわけじゃないっすよ。
親父の借金を帳消しにしてくれたら、すぐにでもオサラバっす」
「そうなの?
そうなったら寂しいわ。私やコーネルとは幼馴染みたいなものなのに」
「よく言いますねぇ。
・・・で、自分に何か用事で? 面倒事は聞く前から拒否っすけど」
「コーネルを呼んできて欲しいのよ。
もうすぐパーティーの時間だから」
「パーティー?」
ここでやっとグレーダは箒の素振りを止める。
「ちょっと、メイドなのに今日の宴の話聞いてなかったの?」
「宴を開くほどの何かがあるんで?」
リシアは呆れを通り越して苦笑いをした。
「今晩はうちと分家の親睦パーティーなの。
・・・というのは表向きで、実際はコーネルと従妹のマオリを婚約させようって魂胆なんだけどね」
「あぁ・・・そりゃ王子も出てこないわけっすよ。
あの人めっちゃ嫌そうな顔してましたもん」
「でも分家との関係もあるわけだし・・・
出席するだけでもしてもらわないと困るのよね」
「んな事言うんなら王女が直接行ったらどうっすか」
「私はこれから分家を出迎えに行かなきゃいけないの。
ねぇ、お願いよグレーダ」
「・・・はぁ。わかりましたよ。行きゃあいいんでしょ行きゃあ」
「頼むわね」
肩を回して面倒そうに城内へと向かうグレーダを見送り、リシアは空を見上げた。
茜色の空にぽつぽつと星が見え始める。
「まったく世話の焼ける弟だわね・・・。
私がここからいなくなったらどうするのかしら」
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