階段を上り、廊下の角を曲がった一番奥に王子の部屋がある。
そういえば箒を置いてくるのを忘れた。仕方なく肩に担ぎ、グレーダは扉を叩く。

「王子ー。なんかそろそろパーティーらしいっすよ。
さっさと出てきてくださいよ面倒くさい」

しかし返事はない。
チッ、と舌打ちしたグレーダは有無を言わさず扉を無理やり開いた。

バタン、と開いた扉の向こう。
だが室内は照明も付けておらず、ベランダが開け放たれカーテンが風に揺れていた。

彼の部屋はいやに広い。それこそベッドと机程度しかないほどだ。
隠れる場所などないが、どこをどう見ても王子がいない。

「王子ー?
ったく、ガキじゃないんだから駄々こねないで・・・」

開けられるものを全て開け、ひっくり返せるものは全てひっくり返した。それでも王子は見つからない。
しばらく部屋を見つめてから、グレーダはベランダに出てみた。
そこにも彼はいなかったが、その代わりに見つかったものがあった。


――ベランダの手すりから外へと垂れるロープ。


「・・・あ、王子脱走した」



普通のメイドならば慌てて報告に走るところを、グレーダはのろのろと廊下を行き、国王の部屋の扉を叩いた。

「どうしたのだ、グレーダ?」

「なんか、王子どっか行ったみたいっす」

あまりの適当な言葉に一瞬状況が頭を通り過ぎたが、国王は思い切り立ち上がって目を見開いた。

「コーネルが?!」

「ベランダにロープが括ってあって、多分それ伝ってどっか行ったんだと思うっす」

「馬鹿な・・・」

思わず頭を抱えた国王に、更に追い打ちがかかる。



グレーダの後ろで思い切り扉が開き、リシアが駆け込んできた。

「お父様、大変!!
分家の馬車が賊に襲われたって!!」

ダンッ!と机を叩いた国王は、すぐに命令する。

「即刻コーネルを連れ戻せ!!
そして騎士団はすぐに分家の保護へ迎えと命令せよ!!」

「え、なに? コーネル?
お父様、どういう・・・」

「早く!!」

訳も分からないままリシアは慌てて部屋を飛び出した。


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