窓辺から朝日を眺めつつ優雅に茶を楽しんでいると、質素な宿に不相応な集団がぞろぞろとやってきた。
ポカンとする宿の主を余所に、その集団の中の1人がつかつかとジストの前にやってきて敬礼をする。
「お迎えに上がりました、ジスト様。
王城にて国王ラズワルド様がお待ちです」
「城の者か?」
「はっ。オリゾンテ王家直属の騎士団でございます」
「そうか。わざわざ出向いてもらえるとはな。感謝する」
カチャ、とカップが置かれ、ジストは立ち上がる。
向かいの席で成り行きを他人事のように眺めていたメノウに、ジストはいつも通り声をかけた。
「君も来るのだ」
「断る」
護衛を依頼したその時よりも間髪入れずに彼は拒否した。
「何故だ?!
君は私と共に行く義務と資格がある!
ラズワルド殿に君を紹介したい」
「そんだけガッチガチの鎧野郎共に固められてりゃ、ワイなんざいらんやろ。
さっさと行ってこいや」
素性の知れない男にいきなり“鎧野郎”と揶揄され、騎士団の者はあからさまに気分を害したようだ。冷たい視線が集中する。
「駄目だ!君も行くのだよ!!
わかった、これは命令だ。主の命令だぞ、素直に聞くのだ!!」
「あのなぁ。
王のところに傭兵なんか連れて行ってみろ、姫さんが面倒に巻き込まれるんやぞ」
騎士団の者達の間がざわつく。
「傭兵・・・?」
「ジスト様、これは一体どういう?」
「彼は私の護衛だ!侮辱する事は許さないぞ!」
ジストの一喝で集団はたじろぐ。
その勢いでメノウの腕を無理やり引っ張り、立ち上がらせる。
「勘弁してくれ・・・。
これ以上目立たせんなや」
「事を大きくしたくないのなら、素直に私についてこい!」
ズルズルと引きずられるように彼は足取り重く、仕方なく従う。
奇妙な2人の光景を訝しげに見ながら、迎えの騎士達もそれに続いた。
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