ハイネはキラキラと瞳を輝かせ、嫌がるアイレスの腕を引っ張って外に出た。

「すごいすごい! 船があんなにたくさん!!
ねぇ、あれヒクウテイってやつやろ!?」

「飛空艇を空飛ぶ船だなんて古風な表現をする人間、もう絶滅危惧種かと思っていました。
つまり自ずと貴女の文明レベルの低さが証明されたわけです。
あぁ、太陽が鬱陶しい。嫌だ。俺は外なんか出たくない。戻ります」

「なんや、もう!
あんな真っ暗な部屋にこもっとるんか!?
ゼッタイ体に良くない!!
こんなにいい天気なのに!!」

「アハハ! ハイネ君はアウトドア派かぁ!
そうだよ、アイレス。たまには外に出ないとね」

「……こんな“嘘だらけ”の外界の何が面白いんですか」

ぼそ、とそう呟いたアイレスはさっさと元の部屋に戻ってしまう。

「なにさ。付き合い悪いあんちゃんやな~……」

「まぁまぁ、あんまり責めないであげて。
あの子にもあの子なりにあぁなった理由があるわけだからさ。
……そうだ、ハイネ君。よかったら近くの街を案内してあげよう!
アイレスは人馴れしてなくてさ、カリカリしちゃってるから少し落ち着くまで。ね?
君もこの世界を知れていいんじゃないかな」

「ほんま!? いいの!?」

「もちろん!
……あ、でも僕、あんまり若い女の子とのデートに慣れてないんだ。
その辺りはあんまり期待しないでね!」

アイレスとの気まずい空間に戻るよりも、剽軽なケイトと過ごす方がどうあがいても楽しいに決まっている。
まだまだ出会ったばかりで人となりを掴み切れたわけではないが、不思議とケイトからは悪意のようなものを一切感じない。
見た目は立派な成人男性だが、どこか愉快な少年のようでもある。
ひとまず、ハイネはこのケイトという人物の誘いに乗ってみる事に決めた。



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